M2M、IoT、ビッグデータ活用などの話で代表的な活用例として扱われることがある農業のIT化。その中でも先進的な事例として取り上げられることが多いのはカルビーのじゃがいも調達に関してです。
2014年3月期のカルビーのポテト関係のスナック菓子の売上は約1119億円で、ポテトチップスの国内シェアの70%はカルビーが占めています。カルビーの売上全体の約56%を占めています。じゃがいもの調達が会社の命運を握っているといっても過言ではありません。実際に、最近も台風の影響でじゃがいもが不足し、ポテトチップスの販売が延期されるという事態も発生しました。
http://www.sankei.com/economy/news/160905/ecn1609050016-n1.html
カルビーは、1980年にじゃがいもの安定調達を目指して、カルビーポテトという名称で原料部門を独立させています。じゃがいもの調達先は3/4が北海道で、18万トンを1100軒の契約農家で収穫しています。カルビーポテトのデータ活用は、センサー経由で自動的に収集するデータと人間の手で集めたデータの双方を利用していることに特徴があります。双方のデータを収集・分析することで、じゃがいもの不作を回避しているわけです。
契約農家には気象センサーを設置しています。気象センサーは太陽光パネルと降水量を図る容器で構成されている装置で、10分おきに気温、湿度、降水量、日射量といったデータを取得しているそうです。気象状況から疫病発生が予想されるような状況が検知されると、契約農家の携帯電話、スマートフォンに注意喚起メッセージが送られ、すみやかに疫病の予防作業に着手するよう促されます。
契約農家の協力を得て行っている人間によるデータの収集、分析では
①種いもを土に植え付けた深さや使用した肥料の種類・量などからの農作業の内容を示すデータ。
②じゃがいもの茎の長さの推移や単位面積当たりの収穫量などの育成データ。
といったデータを収集しています。
①のデータから種いもを植える深さは15cm~17cmが適切であるということが分かりました。以前は原料に使えない緑色のじゃがいもが多く収穫されたそうですが、15cm以上の深さにするようにして半減したようです。
②のデータから植えつけてから2か月後までに茎の長さが20cmにならないものはそのままでは正常に育成しないことが分かりました。早い段階で異常を知ることができることで、農家は早めに肥料を追加するなどの対策を打てるようになりました。
カルビーは引き続き、データの融合、分析を進めているそうなので今後も面白い発見があるかも知れません。農家にとっても作業に無駄がなくなって収穫高も安定するので、データ入力の手間よりも得るものが多いと思われます。どんな企業でもデータリテラシーが必要とされる時代ですね。
カルビーポテトのWebサイト面白いのでお勧めです。